海草場の再生における規模の重要性

平成27年12月4日
国立研究開発法人 港湾空港技術研究所

海草場の再生における規模の重要性
―より効果的な海草場の再生へ貢献―

ナイメーヘン大学(オランダ)のvan Katwijkを中心とした港空研・東大大気海洋研・北大厚岸臨海実験所を含む国際共同研究グループは、海草*場の再生に関して、世界中の事例を統合して解析し、株の移植技術だけでなく再生規模もその成功にとって重要であることを世界で初めて突き止めました。本研究成果は、2015年11月25日付の英国専門科学誌Journal of Applied Ecology(ジャーナル・オブ・アプライド・エコロジー)電子版に掲載されました。この研究成果は、海草場の再生においてこれまで重要視されてこなかった規模を計画段階から考慮することで、より効果的な海草場の再生が期待できるようになることを意味しています。 

 

*海草:沿岸域の静穏で浅い砂泥性の場によく発達する植物のことであり、我が国ではアマモが代表的な種である。岩礁において発達するコンブやワカメなどの海藻とは区別される。

【背景】
海草は、海洋生物のゆりかごや二酸化炭素吸収源としての役割等があることがよく知られていますが、近年、埋め立てや水質の悪化によって生息場が少なくなってきていることから、その再生が世界的に行われています。我が国においても、海草の代表的な種であるアマモ場が減少しており、行政やNPO等によって、株の移植等による再生が積極的に取り組まれています。しかし、海草場の再生の成功率は高くなく、その理由はよく分かっていませんでした。

【成果の内容】
港空研・東大大気海洋研・北大厚岸臨海実験所を含む国際共同研究グループは、世界中の海草場の再生事例に関するデータを収集し大域的解析を行うことで、

・海草場再生の成功率は37%と低く、特に衰退の原因となった水質悪化や攪乱増加の問題を解決せずに実施した海草場の再生の失敗率は高いこと

・再生の規模**が海草場再生の成功と強く関係していること

を世界で初めて突き止めました。

 **再生の規模:本論文では一事例当たりの初期の株(枝)数として定義されており、空間規模および株(枝)の密度の意味を含んでいます。

【解説】
国際共同研究グループは、世界17の国から計1786の海草場再生の事例を収集し、海草場の生残率および平均成長率と再生の規模との関係等を解析しました。

この結果、移植から36ヶ月後における海草場の生残率は、全体で37%と低く、特に衰退の原因となった水質悪化や攪乱増加の問題を解決せずに実施した事例において低くなること、一方で、その率は再生規模が大きくなることで高くなることを突き止めました。これは、海草の生育に影響する環境因子の変動に対して規模が大きくなることでリスク分散できていることが理由として考えられます。

また、平均成長率も再生規模が大きくなるに従って増加することも突き止めました。この理由として、海草の高い株密度による地盤の安定化等の海草が環境を形成する作用が海草自身の成長に正の効果(正のフィードバック)をもたらしたものと考えられます。

リスク分散による再生の成功や正のフィードバックの現象はこれまでにも考えられてきましたが、我々の大域的解析により、世界規模で海草場の再生においても見られることを世界で初めて突き止めました。

これらから、大規模な再生が行える場合、空間的に広く、かつ、高い密度で株移植することで、再生における成功の確率は高くなると言えます。一方、再生規模が限られる場合においては、空間的にリスク分散させるか、高い密度による自立的な維持能力を期待して移植密度を高くするか、のどちらかを選択することで、効果的な海草場再生が期待できます。

【成果の意義】
環境条件の改善等をせずに海草場の再生を行っても2/3程度の事例が失敗してしまっていますが、本研究成果は、環境の改善や再生規模を考慮することで、より効果的な海草場の再生が期待できるようになることを意味しています。

我が国においても主にアマモ場の再生が積極的に行われているが、今後の再生においては、これまでにも考慮されてきた株(枝)の移植技術や遺伝的多様性への配慮に加え、環境改善や再生規模を検討することが望まれるものと考えられます。

【論文名】
Global analysis of seagrass restoration: the importance of large-scale planting(海草再生の大域解析:大規模スケールの移植の重要性)

【著者】
Marieke M. van Katwijk, Anitra Thorhaug, Núria Marbà, Robert J. Orth, Carlos M. Duarte, Gary A. Kendrick, Inge H. J. Althuizen, Elena Balestri, Guillaume Bernard8, Marion L. Cambridge, Alexandra Cunha, Cynthia Durance, Wim Giesen, Qiuying Han, Shinya Hosokawa1, Wawan Kiswara, Teruhisa Komatsu2, Claudio Lardicci, Kun-Seop Lee, Alexandre Meinesz, Masahiro Nakaoka3, Katherine R. O’Brien, Erik I. Paling, Chris Pickerell,
Aryan M. A. Ransijn and Jennifer J. Verduin
1 細川真也:国立研究開発法人港湾空港技術研究所 海洋情報・津波研究領域 海洋環境情報研究チーム
2 小松輝久:東京大学大気海洋研究所
3 仲岡雅裕:北海道大学厚岸臨海実験所

【掲載雑誌】
Journal of Applied Ecology(ジャーナル・オブ・アプライド・エコロジー)

 

問い合わせ先


国立研究開発法人港湾空港技術研究所 海洋環境情報研究チーム
主任研究官 細川 真也(ほそかわ しんや)
Tel: 046-844-5107,Fax: 046-844-1274
Email: hosokawa@pari.go.jp
URL: http://www.pari.go.jp/unit/kaikj/member/hosokawa.html

  

報道対応


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