沿岸域のブルーカーボンと大気中CO2の吸収との関連性に関する現地調査と解析

発行年月 2013年3月 港湾空港技術研究所 報告 052-01
執筆者 所立樹,細川真也,三好英一,門谷茂,茅根創,桑江朝比呂
所属 沿岸環境研究領域 沿岸環境研究チーム
要旨  将来の気候変動対策のための,大気中CO2濃度増加の抑制は喫緊の課題である.近年,気候変動対策の一つとして注目されている「ブルーカーボン」は,海洋生態系の光合成活動によって固定される炭素であり,堆積物中に蓄積されることで最大で数千年程度CO2が大気中から隔離されるため,今後の気候変動対策にとって重要なオプションとなり得る.沿岸域はブルーカーボンの主要な堆積の場であり,特に海草場では,再生や保全によって,温室効果ガス削減効果も期待される.
 しかしながら,ブルーカーボンの蓄積と大気中CO2濃度やその動態との関係性について,定量的な評価はなされていない.これは,沿岸域特有の複雑な炭素フローに起因している.さらに,従来の知見では,沿岸域は陸域から供給される有機物の分解の場であることから,基本的に大気中へのCO2放出源とみなされている.また,既存の研究は植生が無い河川域や水中では有機物の分解が卓越するマングローブや塩性湿地(すなわち,潜在的に海水から大気中へCO2が放出されやすい場)に集中しており,光合成活動により水中のCO2分圧を低下させ,大気中CO2の吸収量の増加をもたらす可能性がある海草場については,世界的にもほとんど測定例がない.
 本研究では,国内の海草場の炭素動態を現地観測し,測定値を既往研究と比較することで,海草場におけるブルーカーボンの蓄積と大気中CO2吸収との関係性を解析した.その結果,光合成活動が呼吸・分解活動よりも卓越する海草場では,従来の知見と異なり,大気中CO2の吸収源であることが分かった.また,既往研究との比較から,この結果は一地域だけではなく亜寒帯・亜熱帯を含む世界規模の空間代表性を持ちうることが示された.
 本研究の成果として,ブルーカーボンにより沿岸域に炭素固定という新たな価値が付加されることが挙げられる.すなわち,沿岸域が温暖化対策に貢献することを示している.さらに,陸上の森林におけるCO2吸収に対する便益の計上と同様に,沿岸域における生態系の保全や再生のための資金源の獲得に繋がることが期待される.
全文 vol052-no01.pdf(PDF/3.9MB)

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