2011/1/5
港湾空港技術研究所
地震動研究チーム
2001年芸予地震(M6.7)の特性化震源モデル

2001年芸予地震(M6.7)の特性化震源モデルを作成した結果について報告する.図-1に示すように震源モデルは3つのアスペリティからなっており,アスペリティの面積は北から順に9km2,4km2,4km2,アスペリティの地震モーメントは北から順に1.0E+18Nm,0.6E+18Nm,0.8E+18Nmである.個々のアスペリティはローカルな破壊開始点(図-1の★印)から同心円状に破壊するものとし,相対的な破壊開始時刻は北から順に0秒,2.7秒,6.3秒,破壊伝播速度は2.4km/sとした.アスペリティのライズタイムは北から順に0.31秒,0.21秒,0.21秒とした.アスペリティのサイズと地震モーメントは,EHM003,EHM007,HRS012,HRS020の4地点における観測記録ができるだけ再現されるように試行錯誤を行って設定した.その際,工学的に重要性の高い0.2-2Hzの帯域の速度波形の再現性を最も重視し,次いで0.2-10Hzの帯域のフーリエスペクトルの再現性に注意を払った.


図-1 震源モデル

図-2 計算に用いたサイト増幅特性

上記の震源モデルを用い,強震波形計算プログラムsgf51.exe(港空研資料No.1173)を用いて,図-1の4地点における速度波形とフーリエスペクトルを計算した.その際,計算に必要となるサイト増幅特性は既往の研究(野津・長尾,2005)で求められているものを用いた(図-2).位相特性を決めるための中小地震記録としては原則として2001年3月25日19:19に発生した余震(M4.4)の記録を用いた.ただし,この余震の記録が得られていないHRS020については2001年3月26日5:41に発生した余震(M5.0)の記録を用いた.結果を図-3~図-4に示す.速度波形の再現性は,HRS012で30秒付近の過大評価が目立つ他は概ね良好である.フーリエスペクトルの再現性は,HRS012で4Hz付近の過大評価が目立つ他は概ね良好である.HRS012での4Hz付近の過大評価は表層地盤の非線形挙動の影響を考慮していないためであると考えられる.港空研資料No.1173で公開されている強震波形計算プログラムsgf51.exe用の入力データを添付ファイルに示す.

参考文献

野津厚, 長尾毅(2005):スペクトルインバージョンに基づく全国の港湾等の強震観測地点におけるサイト増幅特性,港湾空港技術研究所資料,No.1112.

野津厚, 菅野高弘(2008):経験的サイト増幅・位相特性を考慮した強震動評価手法-因果性と多重非線形効果に着目した改良-,港湾空港技術研究所資料,No.1173.


図-3 各地点における速度波形(0.2-2Hz)の観測結果(黒)と計算結果(赤)

図-4 各地点におけるフーリエスペクトルの観測結果(黒)と計算結果(赤)