1993年北海道南西沖地震(M7.8)の特性化震源モデル

1993年北海道南西沖地震(M7.8)の特性化震源モデルを作成した結果について報告する.図-1に示すように震源モデルは2つのアスペリティからなっており,アスペリティの面積は北から順に64km2,256km2,アスペリティの地震モーメントは北から順に1.0E+19Nm,6.0E+19Nmである.破壊開始点は東経139.183°,北緯42.780°,深さ20km,破壊伝播速度は3.2km/sである.アスペリティのライズタイムは北から順に0.6s,1.3sである.アスペリティの位置は今西他(1995)の研究を参考に設定した.ただし,走向については,今西他(1995)は南北ともN180Eとしているが,本研究では余震分布およびMendoza and Fukuyama(1996)や壇他(2002)の研究と調和的となるように北側をN200E,南側をN160Eとした.また,傾斜については,P波初動の押し引き分布から求まるメカニズム解は低角西傾斜または高角東傾斜となるが,CMT解は高角西傾斜または低角東傾斜となること(Nakanishi et al., 1993)を考慮し,先に破壊した北側を30°,(本研究では)モーメントの大きい南側を60°とした.アスペリティの大きさと地震モーメントは,小樽-G,室蘭-G,函館-Fの3地点における観測記録がもっとも良く再現されるように試行錯誤を行って設定した.

fig1
図-1 震源モデル

上記の震源モデルを用い,強震波形計算プログラムsgf51.exe(港空研資料No.1173)を用いて,図-1の3地点における波形とスペクトルを計算した.その際,計算に必要となる小樽-Gのサイト増幅特性は,既往の研究(野津・菅野,2010)で求められているK-NET小樽におけるサイト増幅特性に対して,K-NET小樽と小樽-Gにおける同時観測記録のスペクトル比を乗じることにより設定した(図-2).室蘭-Gと函館-Fのサイト増幅特性は既往の研究(野津・長尾,2005)で求められているものを用いた(図-2).ただし函館-Fに対しては函館-Gのものを適用した(両地点は事実上同一地点である).位相波としては1993年7月13日1:01に発生した余震(M6.0)の記録を用いた.結果を図-3~図-4に示す.波形とスペクトルの再現性は概ね良好である.

この震源モデルを用い,強震波形計算プログラムsgf51.exe(港空研資料No.1173)を用いて函館-Fにおける波形を計算するために必要なファイル一式を別添ファイルに示す.

参考文献

Mendoza, C. and E. Fukuyama (1996): The July 12, 1993, Hokkaido-Nansei-Oki, Japan, earthquake: Coseismic slip pattern from strong-motion, Journal of Geophysical Research, Vol.10, No.B1, pp.791-801.

Nakanishi, I., S. Kodaira, R. Kobayashi, M. Kikuchi and M. Kasahara (1993): The 1993 Japan Sea earthquake: quake and tsunamis devastate small town, EOS Trans. Am. Geophys. Union, 74, No.34, pp.377-379.

今西和俊,池田岩音,佐藤魂夫(1995):経験的グリーン関数法による1993年北海道南西沖地震の破壊過程,地震2,第48号,pp.365-373.

壇一男,宮腰淳一,八代和彦(2002):経験的グリーン関数法による1993年北海道南西沖地震の札幌および秋田における地震記録の再現-強震動予測のための震源モデルの特性化手法の検証-,日本建築学会構造系論文集,第554号,pp.53-62.

野津厚,菅野高弘(2010):スペクトルインバージョンに基づく道北の強震観測地点におけるサイト増幅特性,港湾空港技術研究所資料,刊行予定.

野津厚, 長尾毅(2005):スペクトルインバージョンに基づく全国の港湾等の強震観測地点におけるサイト増幅特性,港湾空港技術研究所資料,No.1112.

fig2
図-2 計算に用いたサイト増幅特性
fig3
図-3 各地点におけるフーリエスペクトルの観測結果(黒)と計算結果(赤)
fig4
図-4 各地点における速度波形(EW成分,0.2-1Hz)の
観測結果(黒)と計算結果(赤)