1983年日本海中部地震(M7.7)の特性化震源モデル

1. はじめに

1983年日本海中部地震は,過去に日本海東縁部で発生したことがわかっている地震としては最大級のものであり,周辺地域における照査用地震動の評価においてその再来も考慮されることが多い.この地震のように,過去に実際に発生した地震の再来を考慮して強震動評価を行う場合には,当該地震により得られている強震記録を出来るだけ再現できるような震源モデルを用いることが望ましい.1983年日本海中部地震については,秋田港および青森港における強震記録をある程度再現できる震源モデルが提案されているので,ここではそれを紹介する.

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図-1 震源モデル

図-1に示すように震源モデルは3つのアスペリティからなっており,アスペリティの面積は南から順に306km2,306km2,306km2,アスペリティの地震モーメントは南から順に0.88E+20Nm,1.32E+20Nm,1.32E+20Nmである.破壊開始点は東経139.239°,北緯40.194°,深さ11.97km,破壊伝播速度は3.12km/sである.アスペリティのライズタイムは南から順に1.4s,1.4s,1.4sである.この震源モデルを強震波形計算プログラムsgf51.exe(港空研資料No.1173)に入力できる形式にしたものをテキストファイルに示す.

 

2. 秋田港・青森港における強震波形計算結果

上記の震源モデルを用いて,経験的サイト増幅・位相特性を考慮した強震波形計算(計算プログラムsgf51.exe)を行い,秋田港・青森港における計算結果を観測結果と比較した(図-2~図-4).秋田港の計算では強震観測点「秋田-G」のサイト増幅特性(港空研資料No.1112)を用いた.青森港の計算では,強震観測点「青森-G」のサイト増幅特性が港空研資料No.1112では評価されていないので最寄りのK-NET観測点であるAOM020におけるサイト増幅特性(港空研資料No.1112)を用いたが,AOM020と青森-Gにおけるサイト増幅特性は,両地点で得られた地震観測記録の比較からほぼ同一と考えられる.位相特性としては,対象地点への入射角とback azimuthができるだけ対象地震と類似している中小地震記録を用いることが望ましい.ここでは1997年11月23日12:50ごろ秋田県西方沖で発生した地震(M5.8)による観測記録を用いることとした(青森港ではAOM020の記録).なお青森港の位相については観測結果とより適合するようにNS成分を正負反転させて用いている.

図-2~図-4を見ると,全体に波形およびスペクトルは比較的良く再現されているが,特に青森港では全体に少し過大評価気味になっている.

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図-2 秋田港・青森港における観測結果と計算結果の比較(フーリエスペクトル)
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図-3 秋田港における観測結果と計算結果の比較(速度波形)
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図-4 青森港における観測結果と計算結果の比較(速度波形)

3. 秋田港・青森港における強震波形計算結果(非線形パラメタあり)

上述の線形の条件での計算は特に青森港では少し過大評価気味であったため,次に非線形パラメタを用いて弱い非線形挙動(ν1=0.99,ν2=0.005)を考慮した強震波形計算を行った.その結果を図-5~図-7に示す.非線形パラメタを用いることにより過大評価が解消され,秋田港・青森港とも観測結果にかなり近い計算結果が得られた.

 

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図-5 秋田港・青森港における観測結果と計算結果の比較(フーリエスペクトル)
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図-6 秋田港における観測結果と計算結果の比較(速度波形)
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図-7 青森港における観測結果と計算結果の比較(速度波形)

4. 謝辞

本震源モデルは東北地方整備局仙台港湾空港技術調査事務所との共同作業で作成したものです.防災科学技術研究所のK-NETの強震記録を利用させていただきました.記して謝意を表します.