既往の大地震による地震動と照査用地震動の比較
港湾空港技術研究所
地震動研究グループ

はじめに

我が国の港湾の中には,近年,大地震による強い地震動を受けた港湾も少なくない.一方,港湾の施設の技術上の基準では,各港湾・ゾーンにおけるサイト特性を考慮して照査用地震動を設定することになっており,サイト特性を考慮したレベル1地震動が2007年ごろから徐々に整備・公開されてきている1)2)3).そこで,もしも(既往の地震による強震動)≧(レベル1地震動)のような関係がある一つの港湾について成立しており,かつ,当該地震においてある一つの港湾施設が十分な耐震性能を発揮したと考えられる場合には,当該施設はレベル1地震動に対して十分な耐震性能を有していると判断しても差し支えないであろう(既往の地震以降のさらなる高経年化の影響を除けば).我が国の港湾には,高度成長期に旧基準で設計された港湾施設が多数存在しており,それらの全てについて新基準による耐震性能照査を行うことは容易ではないが,上記のような大小関係の情報が整備されれば,有用となるはずである.

このような観点から,ここでは,既往の大地震による地震動と照査用地震動(主にレベル1地震動)との比較を行っている.なお,対象港湾と対象地震は徐々に増やしていく予定である.

港湾におけるレベル1地震動

港湾におけるレベル1地震動は,震源特性,伝播経路特性,および地震基盤~工学的基盤のサイト増幅特性を考慮し,確率論的地震危険度解析により,工学的基盤における年超過確率1/75の地震動として設定されている1)2).そこでは,①活断層地震や海溝型地震(例えば相模トラフの地震)のように震源の位置,広がりなどを特定できる地震と,②その他のM7.0未満のランダムな地震が考慮されている.これらの詳細については文献2)を参照されたい.サイト増幅特性としては原則として地震観測記録から経験的に得られたサイト増幅特性が考慮されている.また,微動観測結果に基づき,一つの港湾を地震動特性の異なる複数のゾーンに分け例えば4),それぞれのゾーンに対して地震動を設定することも行われている.

各港湾へのリンク

仙台塩釜港(仙台港区)

相馬港

東京湾岸の港湾

大阪港

謝辞 防災科学技術研究所および東京都港湾局の強震記録を用いました.記して謝意を表します.
参考文献 1) 長尾他(2005), 土木学会論文集, No.801, Ⅰ-73, pp.141-158. 2)竹信他(2014), 国土技術政策総合研究所資料, No.812. 3)国土技術政策総合研究所港湾施設研究室ホームページ,4)長尾他(2007), 地震工学論文集, Vol.29, pp.197-205.