2007年能登半島地震の震源モデル(第四版)
-デジタルデータ付き-
Earth, Planets and Space, Vol.60の震源モデル |
経験的グリーン関数を用いた波形インバージョンにより2007年能登半島地震(Mj6.9)の破壊過程を推定した.対象周波数は0.2-1Hzとした.グリーン関数としては,本震波形と余震波形の群遅延時間の類似性を考慮し,表-1に示す4つの余震の記録を併用した.比較的震源に近く,かつ表層地盤の非線形性の影響が小さいと考えられるK-NETの5地点を選び,そこでのEW成分とNS成分の速度波形(0.2-1Hz),計10成分をインバージョンのターゲットとした.これらの観測点を図-1に示す.インバージョンには本震波形のS波を含む10秒間を用いた.ISK005およびISK007については,本震記録および本震直後の余震記録に対する表層地盤の非線形性の影響が懸念されたため解析対象から除いた.
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図-1 インバージョンで仮定した断層面と観測点の位置
■は本震の破壊開始点(気象庁),
□は余震の震央(気象庁),
▲はインバージョンに用いた観測点,
△はインバージョンに用いなかった観測点をそれぞれ示す.
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表-1 本震と余震のパラメタ
発生日時* |
北緯* |
東経* |
深さ*
(km) |
Mj* |
M0
(Nm) |
走向**
(°) |
傾斜**
(°) |
滑り角**
(°) |
本震
2007/03/25 9:41:57.9 |
37.220 |
136.685 |
11.0 |
6.9 |
1.36E+19** |
58 |
66 |
132 |
余震1
2007/03/25 15:43:30.5 |
37.293 |
136.772 |
9.0 |
4.5 |
1.25E+15** |
40 |
48 |
137 |
余震2
2007/03/25 18:23:17.0 |
37.297 |
136.852 |
12.0 |
4.2 |
3.13E+14*** |
- |
- |
- |
余震3
2007/03/28 10:51:2.6 |
37.175 |
136.612 |
10.0 |
4.6 |
1.29E+15** |
60 |
80 |
150 |
余震4
2007/04/02 2:51:44.3 |
37.210 |
136.688 |
12.0 |
4.2 |
2.11E+14** |
49 |
80 |
95 |
(出典)*は気象庁,**はF-NET(www.fnet.bosai.go.jp), *** 余震1と2のスペクトル比から推定.
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インバージョンで仮定した断層面の位置を図-1に示す.この断層面は,気象庁の震源(北緯37.220°,東経136.685°,深さ11km)を含むように設定し,F-netのCMT解を参考に,走向は58°,傾斜は66°,長さ36km,幅24kmとした.断層面上におけるグリーン関数の割り当ては図-1の通りである.
インバージョンはHartzell and Heaton(1983)の方法に基づいている.36km×24kmの断層を24×16の小断層に分割し,それぞれの小断層では破壊フロント通過後の3.0秒間に12回のすべりが許されるものとした.各々のすべりによるモーメント解放量が余震モーメントの何倍であるかを未知数としてインバージョンを行う.破壊フロントは気象庁の震源から同心円状に速度3.4km/sで広がるものとした.基盤のS波速度は3.4km/sとした.インバージョンには非負の最小自乗解を求めるためのサブルーチン(Lawson and Hanson,1974)を用いた.また,すべりの時空間分布を滑らかにするための拘束条件を設けた.観測波と合成波を比較する際には記録のヘッダに記載された絶対時刻の情報を用いている.
図-2にインバージョンの結果として得られた最終すべり量の分布を示す. 同図に示すように,破壊開始点付近(a)および破壊開始点よりやや西側の上方(b)にアスペリティを有する震源モデルが得られた.余震のモーメントとして表-1の値を用いると,図-2に示す本震の最終すべり量の分布はMW=6.8に相当する.
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図-2 最終すべり量の分布
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インバージョンに用いた観測点における観測波と合成波の比較を図-3に示す.これらの図において,横棒の部分がインバージョンに用いた部分である.観測波と合成波の一致は比較的良好である.
図-2に示す震源モデルの小断層毎,時間ウインドウ毎のモーメント解放量(その要素に割り当てられた余震のモーメントに対する比)を参考のためテキストファイルに示す.
謝辞:本研究では(独)防災科学技術研究所のK-NETの強震記録,F-NETのCMT解,気象庁の震源データを使用しています.ここに記して謝意を表します.
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(グラフをクリックすると拡大します)
ISK003(NS) ISK003(EW)
ISK004(NS) ISK004(EW)
ISK006(NS) ISK006(EW)
ISK008(NS) ISK008(EW)
TYM002(NS) TYM002(EW)
図-3 観測波と合成波の比較
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