2004年新潟県中越地震の震源モデル(暫定版) -デジタルデータ付き- |
||||||||||||||||||||||||||||||
経験的グリーン関数を用いた 波形インバージョンにより2004年新潟県中越地震(Mj6.8)の破壊過程を推定した. 対象周期は1-5秒とした.グリーン関数としては, 本震とのメカニズム解(www.fnet.bosai.go.jp)の類似性を考慮し, 2004年10月24日9:28に発生した余震(Mj4.8)の記録を用いることとした. 余震の記録が早い段階で公開されたK-NETの34地点から, 表層地盤の非線形挙動の影響が懸念されたNIG019(小千谷) と余震記録のS/N比が十分でなかったFKS030,GIF007,ISK001,ISK004,ISK005,ISK007,ISK008を除外し, 残りの26地点におけるEW成分とNS成分の速度波形, 計52成分をインバージョンのターゲットとした. これらの観測点を図-1に示す.インバージョンには本震波形のS波を含む10秒間を用いた. インバージョンで仮定した断層面の位置を図-1に示す. この断層面は,気象庁の震源(北緯37.288°,東経138.870°,深さ13km)を含むように設定し, 走向は212°,傾斜は50°,長さ40km,幅20kmとした.この領域がすべて滑ったと考えているわけではなく, 取りこぼしがないように少し大きめに設定している.
|
||||||||||||||||||||||||||||||
表-1 本震と余震のパラメタ |
||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||
インバージョンはHartzell and Heaton(1983)の方法に基づいている. 40km×20kmの断層を40×20の小断層に分割し, それぞれの小断層では破壊フロント通過後の3.0秒間に6回のすべりが許されるものとした. 各々のすべりによるモーメント解放量が余震モーメントの何倍であるかを未知数としてインバージョンを行う. 破壊フロントは気象庁の震源から同心円状に速度1.8km/sで広がるものとした. 基盤のS波速度は3.5km/sとした. インバージョンには非負の最小自乗解を求めるためのサブルーチン(Lawson and Hanson,1974)を用いた. また,すべりの時空間分布を滑らかにするための拘束条件を設けた. 観測波と合成波を比較する際には記録のヘッダに記載された絶対時刻の情報を用いている. 図-2にインバージョンの結果として得られた 最終すべり量の分布を示す. 同図に示すように,破壊開始点(気象庁の震源)から, 破壊はやや南寄りの上方に向かって進展したと推定され, その進展した先に一個のアスペリティを有する震源モデルが得られた. ここでのインバージョンでは, 直接には各々の小断層におけるモーメント解放量の余震モーメントに対する比が明らかになるだけであるが, 余震のモーメントとしてF-NET(www.fnet.bosai.go.jp)の値(Mw=4.6)を用いると, 図-2に示す本震の最終すべり量の分布はMW=7.0に相当する. インバージョンに用いた観測点における観測波と合成波の比較を以下に示す. これらの図において,ハッチングをした部分がインバージョンに用いた部分である. 観測波と合成波の一致はある程度満足のいくものである. インバージョンに用いなかった後続位相もある程度再現されている. 特に群馬県,長野県などの観測点では非常に良好に再現されているので, この方位へのradiationはこのモデルによりほぼ捉えられているのではないかと考える. 一方,震源近傍のNIG017(長岡)や栃木県などでは記録の再現性が十分でなく, 今後さらに検討を要する. 栃木県は本震および余震のメカニズムからS波のradiationの節に近いこともあり, 本震と余震のわずかなメカニズムの相違が結果に影響している可能性もある. なお,図-2に示す震源モデルの小断層毎, 時間ウインドウ毎のモーメント解放量(余震モーメントに対する比)を参考のため テキストファイルに示す.
|
||||||||||||||||||||||||||||||
謝辞:本解析では防災科学技術研究所のK-NETおよびF-NETのデータを使わせていただきました。記して謝意を表します。 |