2.津波防災に関する研究テーマ

研究の目的・背景

津波は、「津」すなわち「港」に大きな被害をもたらす波であり、津波防災に関する研究は、前身の港湾技術研究所時代から主要な研究の一つであった。独立行政法人となってからも、海洋・水工部で研究が実施されてきたが、2004年のインド洋大津波を契機に、東海、東南海・南海地震津波など大規模地震津波に対応できる次世代の津波防災を研究するために、津波防災研究センターが設立された。2010年度よりアジア・太平洋沿岸防災研究センターに改組し、その重点項目の一つとして研究を進めている。

研究の概要

アジア・太平洋沿岸防災研究センターは、「津波死者ゼロ」をめざして、津波災害の予測技術の開発、津波のリアルタイム予測技術の開発、新しい水門など津波低減技術の開発などを行っている。

  1. 災害の予測技術の開発
    アジア・太平洋沿岸防災研究センターでは、「防災は市民が具体的に災害の実態を理解することから始まる」と考えており、津波災害を予測して、市民に分かり易く伝える技術の開発を行っている。まず、頻発する津波災害の現地調査を行うとともに、その再現実験を大型の水路で実施することにより、災害のメカニズムやプロセスを把握し、それを再現する数値計算プログラムの開発、あるいは計算結果を分かりやすく伝える「動的ハザードマップ」などの開発を行っている。 それら津波計算および可視化技術を使って、被災時の港湾機能の早期復旧のための計画手法の開発にも取り組んでいる。
  2. 革新的なソフト技術の開発
    現在は、地震の発生後、その震源や規模などから津波を予測して津波警報が発令される。GPS波浪計などによって津波を沖合いで捉え、そのデータから発生した津波を逆算し、来襲する津波とそれによる浸水域を予測する「津波のリアルタイム予測技術」の開発を行っている。
  3. 効果的なハード技術の開発
    津波を効果的に低減する、新たな「津波水門」の開発や「グリーンベルト」の設計法の提案などを行っている。 新たな可動式の津波水門については、現地において2011 年度よりテスト施工されることになっている。

2010 年度の活動

2010年2月27日に発生したチリ地震・津波災害に対して、地震分野の研究者との連携の下、現地調査団を派遣し、チリ沿岸に来襲した津波の特性や地震および津波被害の実態を明らかにした。2010年10月25日に発生したインドネシア・ムンタワイ地震津波に対して、インドネシア海洋水産省との国際的な連携の下、現地調査団を派遣し、津波の特性や被害実態を明らかにした。また、2011年3月11日の東日本大震災では、研究所の支援・調査体制の下で各港湾等での緊急現地調査や情報収集および解析を実施した。そのほかにも、10回の国内外で発生した津波あるいは発表された津波警報や注意報に対して情報収集を行っている。

大規模実験による津波による破壊現象の解明と数値計算による災害の再現について検討を進めており、破壊現象のより詳しい再現のためのプログラムの改良などを実施している。2010年度は、個別要素法との連成システムを構築し、壁面の壊れる様子を再現した。

的確な避難を推進するために、避難の実態について、2009、2010年度の現地調査においてその実態を調査している。避難の開始には、過去の経験や視覚や聴覚による津波の認識が要因になることが分かり、避難計画においては、そのような行動原理に基づいたものとして、緊急鉛直避難場所の確保などが大切であることが分かった。

津波災害を受けたときの港湾の機能を速やかに回復する計画の立案手法の開発に向けて、港湾管理者や利用者と検討を具体的に進めるための津波被害シミュレーションを清水港湾事務所と協力して清水港を対象に実施した。

また津波のリアルタイム予測技術については、GPS波浪計などによる津波観測結果を活用して即時的に浸水域を推定するための「リアルタイム津波浸水予測技術」の開発を進め、南海トラフ沿いの海溝型地震を対象にした場合に地震発生から15 分程度で浸水域の概要を推定する技術を開発した。

「新しい津波水門」の開発については、国土交通省や民間と共同で直立浮上式の水門の開発を目指した研究を進めており、2010年度には、洗掘の安定性などを調査するとともに、周辺への影響などを検討した。

一方、「第7回国際沿岸防災ワークショップ」を東京・品川において2011年1月26~27日に国土交通省および(財)沿岸技術研究センターと協力して開催した。さらに、国土交通省の開発途上国研究機関交流事業により、チリの研究者3名を招聘して、津波計算技術の指導を含め日本における津波に対するハードおよびソフト対策の紹介を行った。このような活動を通じてアジア・太平洋地域における津波防災の進展を図っている。

加えて、国内においては、国や自治体などによる市民への津波防災講演会での講演や、委員会への参加、JICA技術プロジェクトへの支援などを通じて国内外の各地域の津波防災への取り組みに対して協力している。

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