3.高潮・高波防災に関する研究テーマ

研究の目的・背景

近年勢力の強い台風による被害が世界で頻発しており、従来にも増して効果的な高潮・高波対策が求められている。このため、高潮・高波予測精度の向上を目的として、現地観測、数値計算、水理模型実験による総合的な高潮・高波防災に関する研究を重点研究課題として取り組んでいる。

研究の概要

高潮・高波防災に関する研究を実施するため、5つのサブテーマを設け研究を実施している。

  1. 効率的な海象観測と波浪推算技術の高精度化の組合せによる沿岸海象の把握
    NOWPHAS(全国港湾海洋波浪情報網)によって収集される現地海象観測データをもとにした数値シミュレーションモデルとシステムの開発を行う。特に、GPS 波浪計の全国沿岸域展開に対応した、より大水深域におけるリアルタイム性の高い海面変動情報を、沿岸防災に効果的に活用するためのシステム開発に重点をおく。
  2. 越波算定精度の高精度化など高潮・高波被害の予測と対策の検討
    従来は数値計算による再現が困難であった越波等の課題に対して当所が開発した浅海域における波浪変形計算法を応用拡張する。現地観測データに加えて、当所実験施設を活用した水理模型実験を実施し、数値計算の妥当性と適用性の検証を行う。
  3. 高潮・高波による地盤も含めた外郭施設の破壊現象等の解明
    当所が開発してきた波力計算法の適用範囲の拡大を図るとともに、既存防波堤にも活用できる地盤の改良法を提案する。
  4. 地球温暖化の影響の解明と将来予測
    NOWPHASによって当所に収集蓄積された長期間の現地波浪・潮位観測データ、および近年の高潮被災記録をもととして、複雑な自然現象をモデル化した数値シミュレーションモデルの開発・構築を行う。また、東京湾から相模湾への海象観測ネットワークを広げて、それらの観測情報を活用しながら、地球温暖化に伴う波浪と潮位変化を極値も含めて明らかにする。
  5. その他
    既存のプログラムやデータベースを継続的にメンテナンスするとともに、最新の研究成果やデータを反映させたシステムの改良を継続的に実施する。

2010年度の活動

第3世代波浪推算モデルWAM による長期間(1960~2000年の約40年間)の波浪推算結果を実施し、その結果を基に、日本周辺海域における波浪の出現特性の検討を行った。その結果、中城湾においては、1960年代は、年間1~3位に大差がない、1970年頃から、年間1位が突出する年が出始める、1980年代以降、年間1位の波高が大きくなるとともに、年間1 位が突出する年の出現頻度が高まっている傾向が見られることがわかった。

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中城湾における年間1位の擾乱の最大有義波高(○)、年間2位(△)、年間3位(□)、
年間1~3位の波高の平均(棒グラフ)の経時変化

油拡散粒子モデルの開発 においては、瞬間流出を対象としたFay の式を連続流出に適応できるよう、時間の関数を油粒子間距離の関数に変換し、粒子モデルで計算する手法を導出した。 そのモデルをSTOC-ML に組み込み、韓国泰安沖油流出事故の再現計算を行ったところ、モデルが現地を精度良く再現していることを確認した。

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韓国泰安沖油流出事故での観測された流出範囲及び漂流予測計算結果

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