4.海上流出油対策等、沿岸域の人為的災害への対応に関する研究テーマ
研究の目的・背景
人為的な災害の一つである油流出事故は、ナホトカ号の事故に見られるように一旦発生するとその被害は広範囲に及び、人力を主体とした回収作業は困難を極め、対応に長期間を要することとなるため、事故後の迅速な対応が強く求められている。しかし、船舶等から漏出した油は海水と混ざり合うと粘性度が飛躍的に高まり、比重が大きくすくい上げる動力が大きくなること、パイプ内等に付着し円滑な輸送が困難なこと、海水と油の分離が難しく回収後の処理に時間を要することなどにより、油回収のための効果的な対策が確立されているとは言い難いのが現状である。
一方、人為的災害に関するもう一つの課題であるテロ対策については、2001年の米国同時多発テロ以降、国民生活の安全確保に関する要請が高まってきたことを受けて、港湾に関してもセキュリティの向上が求められているが、陸上や海上に比して海中からのテロ行為への対策が遅れている。
そのため、本研究テーマでは、海上に漂流している流出油や海岸に漂着した高粘度油を水蒸気等を用いることによって効率的に回収する油回収機材及び広範囲に漂流する油を迅速に回収するための回収資機材を効果的に配備するための油漂流シミュレーション等の油回収支援技術並びに濁り等により光学系カメラが使用できない海中において物体の映像化を可能とする技術の開発を目的とした調査研究を行っている。
研究の概要
事故を起こした船舶等から漏出した油が海水と混ざることにより流出油は非常に粘性度が高くなり、この高い粘性が回収作業を妨げる原因である。このため、当研究所では、流出油を機械的にすくい上げる様々な機器を開発してきており、今後ともその効率性向上に取り組むこととしている。一方、粘性度を低下させる物理化学的な手法については、回収後の油の処分にも有効であることから、今後さらに研究を進める。また、国土交通省が保有している環境整備船等を対象として、その船舶特性、作業海域の特性等に対応した油回収効率の高い船舶搭載型油回収機材の開発を行う。さらに、効率的な油回収作業の実施に資するため、漂流先を事前に予測する技術の開発を行う。
一方、海中におけるセキュリティ向上のため、低透明度ないし明るさが十分でないことにより光学系のカメラでは視認できない海中において、音響技術を利用して不審者あるいは不審な小型潜水艇等の物体の映像化を可能とする海中における不審物検知技術の開発を行う。
2010年度の活動
- 海上流出油対策に関しては以下の活動を実施した。
- 2009年度に引き続き国土交通省近畿地方整備局所有の油回収船“はりま”を対象とした分散処理モードを追加した流出油回収機の開発を行った。
- 2010年4月20日にメキシコ湾で発生した半没水型石油掘削リグDeepwater Horizon の爆発沈没事故により、油井から大量の原油が流出し、メキシコ湾及びその沿岸に深刻な影響を与えていたため、研究所の幹部及び研究者を派遣し、被害の実態及びその対策について現地調査を実施した。

事故現場における油回収作業状況
油の流出状況(ミシシッピ川河口近く)メキシコ湾油流出調査(2010年7月11~18日) - 流出油のリアルタイム追跡装置については、過年度に開発した自律制御ブイを改造し、神奈川県平塚沖海域において、海表面の海象データ収集と伝送及び擬似油の追跡実験、標準ブイとの漂流比較試験を実施した。
- 流出油の漂流予測シミュレーションの高精度化を図るために東京湾などの閉鎖性海域を対象とした基本モデルを構築するとともに、油回収環境再現水槽をにおいて風力によるドリフト力の検証を実施した。
- 港湾セキュリティに関しては以下の活動を実施した。
- 濁水中における映像取得及び測量支援装置については、本装置から出力される計測データと周辺センサデータ(RTK-GPS データ、GPS 方位データ及び動揺データ)を用いて、構造物等の水中部全体の三次元データを解析処理し、リアルタイムの地図情報と同期の取れた地形データを表示可能とするソフトウェアの開発を行い、東京国際空港(羽田空港)D 滑走路工事現場において実海域実験を行い、動作確認及び評価を実施した。さらに、同装置を実運用に供するための運用マニュアルを作成した。
![]() CAD 図面上に取得データをオーバーレイ |
![]() 任意の断面上で計測データを表示 |
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| 濁水中における映像取得及び測量支援装置の改良(2010年11月29日) | ||








