1.大規模地震防災に関する研究テーマ

研究の目的・背景

東海、東南海・南海地震等の巨大地震による大規模災害が予測されており、港湾・空港施設の防災対策実施のための技術開発が求められている。

しかし、東海地震等の海溝型大規模地震発生時に予測されている長周期・長継続時間地震動の規模が不明であること、対象個所の局所的な地盤特性の違いによる地震動特性の把握が不十分であること、耐震性能照査手法の精度の向上が必要なこと、新たな構造物の耐震性能の向上策が必要なこと、より少ない整備コストで耐震性能を向上させることが必要であること等未解決の課題が多く、格段の技術力の向上が必要である。

研究の概要

本研究テーマでは、(1)地震動の観測、被災の調査、(2)地震動の予測、(3)地震時の地盤挙動の予測、(4)地震時の構造物の予測と対策の4つの観点から研究を進める。

地震は、台風や冬季風浪等と比較して発生頻度の小さい自然現象であり、地震時の地盤や構造物の挙動には未解明な点が多く、それを予測するための技術の向上が必要である。そこで、被害地震発生時の地震動を明確化するための強震観測の継続的な実施、地震後の被害調査に加え、強震動作用中の地盤・構造物の挙動を把握するためのモニタリングを実施し、具体的な地震防災の基礎的知見を得る。

港湾・空港施設を設計するための設計地震動を的確に設定するため、震源のモデル化手法、表層地盤の非線形挙動評価手法、より精度の高い強震動評価手法の提案・実用化について検討を進める。東海、東南海・南海地震等の巨大地震発生時には長周期の地震動や継続時間の長い地震動が予測されており、このような地震動に対する地盤ー構造物系の動的挙動予測と対策技術の信頼性を向上させることが必要である。

2010 年度の活動

東海、東南海・南海地震等の大規模地震発生時に予測されている長周期・長継続時間地震動の規模や地盤特性により異なる地域別地震動特性を把握するとともに、耐震性能照査手法の精度向上及び耐震性能を上げつつ整備コストを縮減する技術開発等を重点研究課題として取り組んでいる。また、昭和30年代後半の高度経済成長時代に急速に整備された施設が設計で想定していた供用期間50年を迎えつつあることから、施設を供用しながら機能更新や耐震性を向上する技術に関する研究に取り組んでいる。 

また、地震による空港の地盤災害リスク評価方法を構築することを目的として、2007年度に埋立地に築造した実物大の空港施設で、発破により人工的に液状化状態を再現する実験を実施した。その成果を受け、滑走路やエプロンの液状化対策としての新しい地盤改良の考え方(要求性能を確保したコスト縮減)の実務への適用を検討し、仙台空港、新潟空港等で施工が開始された。

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新潟空港における液状化対策工事

また、継続時間の長い地震時の液状化特性に関する実験・解析に基づき、地震動波形の性質を考慮した液状化判定法を提案し、港湾・空港・海岸施設の液状化判定に反映された。

さらに、巨大地震への対応として、岸壁背後への格子状固化処理工法の適用性に関する検討について実験的に検討し、挙動を明らかにし適用範囲等を提案した。既存矢板岸壁の耐震補強・増深に対して、岸壁を供用しながら対策する二段タイ工法を提案し、耐震性能照査により効果が確認できたため仙台塩釜港において施工された。

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岸壁を供用しながら補強する二段タイ工法の概念図

既存コンテナクレーン実機の振動特性を明らかにするとともに、長継続時間地震動に対応可能なコンテナバース上での後付免震技術を開発し、実機製作へ向けた技術支援を実施した。

2010年チリ地震・津波被害調査を実施し、地震動と津波の複合被害の破壊過程の把握が必要であることを再確認し、大規模地震津波実験施設を世界で初めて開発・完成させ、地震・地盤・津波の研究者の連携を図り研究用ツールとしての実験技術開発に着手した。

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大規模地震津波実験施設の非作動時(左)と実験開始後の様子(右)

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