7.広域的・長期的な海浜変形に関する研究テーマ
研究の目的・背景
日本の海岸面積は、侵食のために年間160ha の速度で減少しており、それを防ぐための広域的な総合土砂管理が不可欠である。そこで、海浜や干潟の保全・回復を含む総合土砂管理を行うため、信頼性の高い海浜地形変動予測システムの構築に向けた研究を重点研究課題として取り組むとともに、海浜や干潟の保全技術の開発を行っている。
研究の概要
広域的・長期的な海浜変形に関する研究を実施するため、以下の3つのサブテーマを設け研究を実施する。
- 地形変動特性・底質移動特性の把握
- 当所が保有する波崎海洋研究施設(HORS)における現地観測データを基に、長期(20年程度)の断面変化特性や汀線近傍の短期的な地形・底質変化特性を検討する。また、他海岸の現地データを基に、離岸提など構造物周辺の中期的な地形変化特性を検討する。さらに、現地観測手法の開発改良に関する研究を並行実施し、観測業務の高度化を図る。
- 地形変動に関する数値シミュレーションモデルの開発
- 中期及び短期の平面地形変動、断面地形変動を推定するための数値シミュレーションモデルを開発する。数値シミュレーションモデルの開発を行うにあたっては、波崎海洋研究施設(HORS)における現地観測データ等によって検証を行う。
- 広域的・長期的な海岸維持管理手法の開発
- 効率的な海岸の維持管理のため、現地実証試験等を通じて具体的な工法を開発する。現行中期計画期間においては、サンドバイパス工法の実用化を主たる目標として開発研究を行う。また、上記のサブテーマ 1. 及び 2. の成果を受け、確率的な要素を取り入れた、長期的な砂浜の維持管理設計法を提案する。
2010年度の活動
本研究では重回帰モデルを茨城県波崎海岸で観測された22年間の長期にわたる汀線位置データに適用し、バー及び潮位変動が汀線変動に与えている影響と汀線変動予測モデルへの新たなパラメータ導入の可能性を評価・検討した。その結果、汀線変動量に、沖波エネルギーフラックス、汀線位置、岸側バー高、沖側バー高、最大潮位、最大上げ潮速度が影響を及ぼしていることが明らかとなった。従来の研究では考慮されていなかった岸側バー高、沖側バー高、最大潮位、最大上げ潮速度を含んだモデル(下図-Model No.1)の汀線位置の再現結果は、含まないモデル(下図-Model No.2)と比較して、1993 年頃(バーが沖側で未発達)の後退傾向、1996-1998年頃(バーが沖側で発達)の前進傾向がよく表されていた。各係数を見ると、バーが発達するほど汀線前進量は大きくなり、バーが侵食を防ぐことを示している。一方、最大潮位は高いほど、汀線の後退量は大きくなることを示している。これはバーの発達に伴う砕波により汀線付近へ到達するエネルギーフラックスが減少する現象と高潮位時には砕波が起こりにくくなるとともに、より汀線付近の波当たりが強くなることを表したものと考えられる。

汀線位置の実測値及び汀線変動モデルによる再現結果(1986-2007)
波崎海洋研究施設で取得された長期間のデータを用いて、汀線近傍である前浜の地形変化とそれより沖のバー形成領域における地形変化との相関、ならびにそれらの地形変化と外力との関係を検討するために、以下に示す変数間の相関を調べた。相関を調べた変数は、バーの移動速度dΨ1/dt、汀線位置ys、汀線位置の変動速度dys/dt、沖波のエネルギーフラックスEf、およびPDO(Pacific Decadal Oscillation:太平洋十年規模振動)指数の年平均値である。汀線近傍である前浜の地形変化とそれより沖のバー形成領域における地形変化との相関を見てみると、バーの移動速度dΨ1/dt と汀線位置ys との相関係数は0.31 であったけれども、有意水準5%では両者の間に相関は認められなかった(下表)。また、同様に、バーの移動速度と汀線位置の変動速度dys/dt との間、および汀線位置と汀線位置の変動速度との間にも相関は見られなかった。地形変化と外力との相関を見てみると、有意水準1%において汀線位置の変動速度は沖波のエネルギーフラックスと負の相関があった。一方、汀線位置の変動速度の積分値である汀線位置の長期変動は、波のエネルギーフラックスよりもPDO 指数との相関係数が高く、後者は有意水準5%において負の相関が認められた。
各変数間の相関係数







