萌芽的研究

2015年度に実施した萌芽的研究

  研究実施項目名(萌芽的研究)
1 現場型培養実験系と生物地球化学的分析による未知の炭素隔離過程の探索
2 UAV等による港湾・海岸施設の点検に関するフィジビリティスタディ
3 ダムブレイク型の新津波造波手法の開発
4 中間土の骨格構造に基づく力学特性の評価手法の提案
5 水中作業機械の水中音響ビデオカメラ像の高品位化に関する検討
6 屈折率マッチングによる地盤流動現象の3次元可視化

萌芽的研究の事例

現場型培養実験系と生物地球化学的分析による未知の炭素隔離過程の探索

  • 港湾は多くのCO2排出源を有しており、低炭素社会の実現に向けた取組は喫緊の課題である。気候変動の緩和策として注目されているのが、海洋生態系によるCO2の隔離・貯留機能であるが、そのプロセスには未解明の部分も多い。
  • そこで、本研究では、現場型培養実験系と生物地球化学的分析を組み合わせることで、複雑な現場環境において炭素隔離のキープロセスを抽出する複合的手法を研究開発した。
  • 現場型培養実験系は藻場・干潟などの生態系の一部を閉鎖系培養器によって部分的に隔離し、内部の物質の挙動を追跡する手法である。本研究における開発の特徴は、より現場に近い生物応答を得るために、培養器内に流れを発生させていることである。
  • 新たな化学分析手法として、水柱の無機・有機炭素の安定同位体比分析手法を検討した。キャビティリングダウン分光方式CO2同位体アナライザーは、広範に使われている同位体比分析装置に比べて、安価で扱いやすいという特徴を持つ。環境水試料の処理導入ラインを新たに開発して装置に組み込んだ。
  • 今後は、同位体分析装置の精度検証および測定時間短縮方法を検討するとともに、現場型培養実験系を実海域に導入し、日本全国のデータを収集していく予定である。
現場型培養実験系       安定同位体比分析用の処理導入ライン

 

UAV等による港湾・海岸施設の点検に関するフィジビリティスタディ

  • 近年、点検が困難な施設や災害箇所などでGPSやカメラを搭載したマルチコプターが利用されているが、港湾及び海岸分野での利用実績は少なく、その利用方法に関する検討は十分には行われていない。
  • そこで、本研究では、港湾施設及び海岸保全施設の目視点検におけるマルチコプターの利用方法を提案するため、マルチコプターの利用の利点と課題を明らかにすることとした。
  • 施設や部材に発生した段差やずれ、ひび割れの有無など、変状の有無の確認には利用できたが、ひび割れ幅の推定、鋼管杭及び被覆防食工の最前列海側以外並びに桟橋上部工の下面側などの確認には利用できなかった。
  • 撮影が可能な部材の位置や変状の数値的な評価に課題はあるが、詳細点検を実施すべき部材や箇所の選定、著しい変状や被災した施設など点検者の安全確保が困難な施設の点検などにマルチコプターを利用することが効果的と考えられる。
   
防波堤のずれ(高度約30m) 上部工の欠損(高度約10m)

 

ダムブレイク型の新津波造波手法の開発

  • 水理実験においてピストン造波形式による津波の再現には岸沖方向に長い実験水槽が必要となり、コストも増大となる傾向がある。こうした問題から、既往の平面水槽では十分な波高の津波を発生させることが難しく、スケールの縮小化により津波襲来時の構造物に作用する波力の詳細な計測が困難となっている。一方、ダムブレイク型の造波形式は、大波高の津波を再現できるものの、既存の装置では任意の津波波形の再現には困難が伴う。
  • そこで、本研究では、大波高でかつ任意の波形を持つ津波をより短い造波区間で発生させるための新たな津波発生装置の開発をめざすこととした。
  • ダムブレイク型の造波は、開口部の段差により湧き出し型の造波形態を取ることで制御性能の向上を図ることが可能であるが、流入部の形状による影響の検討は少ないのが現状である。そこで、複数の流入形状を対象に粒子法を用いた数値実験を実施し、形状ごとの波形に与える影響を検討した。次に、数値実験を通じた検討の内、制御性能の拡張性が高かった庇状の回転整流板から成る流入部を小型造波水路に設置し、水理実験を通じて実際の波形制御を検討した。自由水表面のみに直接接する庇状の整流板は、作用する圧力のうち静水圧分の大半を排することが可能なため、気密性や耐久性を最低限に抑えることができ、コストの削減効果が期待できる。
  • 当該の効果を確認すべく小型平面水槽及び中型断面水路による二段階の検討を実施した。機械駆動部の縮小化のため、貯水槽からの流入はバルブによる通水を想定して、小型平面水槽には小型開口部を複数設けた。中型断面水路では、貯水タンクと水路部を配管により接続した。
  • 同じヘッド差を条件とし、回転整流板を有効化させた実験ケース(庇25度)では、整流板を無効化させたケース(庇85度)と比較して波高の増大が顕著となり、波高増大の効果が得られた。他の実験ケースの結果からは、回転整流板の角度調整によって波高及び波形の一定の制御が可能であることが確認できた。また、貯水槽からの各流入部の開口に時間差を設けることで、斜め入射波の再現も得られた。
  • ダムブレイク型の造波装置を対象に、流入部の影響に関する検討を行うとともに、庇型の回転整流板を新たに用いて、波形及び波高を容易に増幅・調整が可能なシステムを試験的に導入し、水理実験からその有効性を確認した。
  • 今後は、中型断面水路を用いて、貯水形式などの機械部の詳細に焦点を当て、経済的かつ効率の良い大規模平面水槽の津波造波形式について具体的な検討を行う予定である。
 

小型平面水槽による検討(庇(回転式整流板)による波高の増幅効果)

 

 
中型断面水路による水理実験

 

中間土の骨格構造に基づく力学特性の評価手法の提案

  • 本研究では、中間土の力学特性の本質的な支配因子として土の骨格構造を捉え、骨格構造と力学挙動との関連の解明に向けて、その力学特性の推定手法を提案することとした。
  • 既往の研究より、中間土については、同一の間隙比であっても供試体作製時の含水比によって力学特性が異なることが明らかとなっており、その理由として砂粒子の骨格構造に対して、細粒分が補助的に働きかけるため、複雑な骨格構造を有するためと推察した。このような複雑な骨格構造は力学特性のみならず透水特性にも影響を与えると考えられるため、種々の条件により作成した中間土供試体に対して、定ひずみ速度載荷圧密試験と三軸試験装置を用いた変水位透水試験を実施した。
  • その結果、供試体作製時の含水比が大きい場合、圧密試験と変水位透水試験によって求めた透水係数はほぼ一致することがわかった。一方、細粒分含有率が同じで、供試体作製時の含水比が異なる場合、間隙比が大きく異なるにもかかわらずほぼ同じ透水係数を示すことが明らかとなった。
   
   
圧密圧力と間隙比の関係 平均圧密圧力と透水係数の関係

 

水中作業機械の水中音響ビデオカメラ像の高品位化に関する検討

  • 本研究では、音響ビデオカメラの映像により水中施工作業を行う場合、作業機械のエンドエフェクタ把握が重要であるが、現状の映像では十分な認識とは言えないことから、超音波を特異的に反射するマーカの利用を検討することとした。
  • 直交する3面で構成されるコーナーキューブは入射方向に反射が戻り(再帰反射)、マーカとして有効である。キューブの大きさ:w、実験で使用する送受波器の波長:λ、入射ビーム径:2Rを考慮し定めた。
  • 水中で作業することなく、入射ビームに対するコーナーキューブの方位角(θ)、角(φ)を調整可能な測定系を構築した。コーナーキューブの回転中心が入射ビームの軸線上にある場合は、コーナーキューブが回転しても送受波器からの距離は変わらないためエコー到達時刻は一定となる。しかし,測定例の示されるように、仰角方向は回転中心が入射ビーム上に載っていない。このため測定時の運用で補正動作が必要であることが分かった。
  • 今後は、波形のpeak to peak値によるコーナーキューブ特性評価を行い、音響マーカとしての利用を検討する予定である。
 
             音響ビデオ像4t              コーナー
             水中バックホー           キューブ       測定系                      測定例

 

屈折率マッチングによる地盤流動現象の3次元可視化

  • 本研究では、屈折率マッチングと呼ばれる技術を地盤工学に応用し、透明な溶融石英の粒子を砂に見立て、地盤流動現象に関する実験を行った。
  • 溶融石英粒子の間隙を同等の屈折率を有する液体で満たすことにより、試料全体が透明な状態を作り出すことができる。これにシート状のレーザーを当てて撮影すれば、試料内部における一断面のみを観察することが可能となる。
  • 実験では円筒形の容器を回転させつつ、1秒間に2,000フレームの撮影を行い、流動現象における試料内部の粒子挙動を観察した。また、レーザーに感応するナノスケールの蛍光粒子を利用して、液体部分の挙動を同時に可視化した。このような連続画像に対してPIV解析を行い、固体及び液体の速度場を定量的に評価することを可能にした。
  • 今後、撮影設備の拡充により3次元計測を試みるとともに、個液二相系の数値シミュレーションとの組み合わせにより、地盤流動現象の更なる理解に向けた研究を行う予定である。
     

左:石英 右:石英+屈折液

 

シートレーザーを用いた撮影

 

レーザー断面の撮影画像

 

     
蛍光粒子を用いた撮影画像 PIV解析結果  

 

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