2C 安定的で美しい海岸の保全、形成に関する研究

研究の目的・背景

  • 戦後の経済の発達に伴い、砂浜・干潟はいくつかの問題を抱えることとなった。その一つは河川からの供給土砂の減少などによる海岸侵食であり、もう一つは航路・泊地における埋没である。前者は美しい国土の消失を、後者は港湾機能の低下を引き起こしている。これらの問題は、地球温暖化による海面上昇や台風などの巨大化によってさらに深刻になる可能性がある。また、砂浜・干潟の変形を引き起こす土砂移動の実態には不明な点が多く残っており、数値モデルによる予測精度も十分とは言えない。
  • そこで、本研究テーマでは、現地データを解析することにより、長期、短期の海浜流、土砂移動、地形変化の実態及びそのメカニズムを明らかにするとともに、その知見を取り込んだ数値シミュレーションモデルの研究開発を行う。さらに、現地データ解析結果や数値シミュレーションを活用し、美しい砂浜を地球温暖化の影響から長期にわたって保全するために、効果的な海浜維持管理手法を提案する。

研究の概要

次の3つのサブテーマを設け研究開発を行う。

  1. 沿岸の地形変形に関する現地データ解析および数値モデル開発
    波崎海洋研究施設などで取得された現地データを解析することにより、長期、短期の海浜流、土砂移動、地形変化の実態及びそのメカニズムを明らかにする。さらに、海岸侵食対策や航路・泊地埋没対策の効果をより高精度で推定し、効果的な侵食対策、埋没対策を提案するために、現地データの解析結果を取り込んだ海浜変形数値シミュレーションモデルを構築し、海浜変形や海底地形の予測精度を向上させる。

  2. 地球温暖化が海浜に及ぼす影響予測
    現地観測の知見や数値シミュレーションモデルを活用し、地球温暖化による海面上昇や台風の巨大化の影響が海浜に及ぼす影響を予測する。

  3. 海岸侵食および航路埋没に有効な沿岸域の土砂管理手法の開発
    ハードな対策(突堤,離岸堤などの構造物)とソフトな対策(養浜)とを組み合わせた海岸侵食及び航路埋没の双方に有効な海浜維持管理手法を提案する。

2015年度の活動

  • 内湾域や河口域における底質移動現象のメカニズムの解明と、航路埋没の原因となる港湾域周辺での底質輸送シミュレーションの高精度化に関する研究を実施した。内湾域を対象として、砂泥混合の底質を対象とした数値シミュレーションの構築を試み、潮流や波浪作用により底質中の含泥率が変化していく過程を再現するモデルを構築した。また、波と流れの作用外力を再現した水槽実験により、現地底泥を用いた底質の移動実験を行い、砂泥混合率の変化に伴う移動量の変化について評価した。
  • 波浪及び海面水位の変化による海浜地形変化(汀線変化)をシミュレーションモデルにより予測するとともに、波候変化に伴った波の遡上高の変化、海面上昇に伴った遡上域の陸側への移動を考慮した将来の波の遡上端の岸沖位置を確率的に求めた。この手法により、気候変動に伴って海岸侵食が生じると同時に、海面上昇に伴う水際線が陸側へ移動、極大波高の増大に伴ってより陸側まで波が遡上することで、沿岸災害リスクが大きく高まることを明らかにした。
  • また、定期点検で得られた海浜地形情報をもとに、観測後一定期間の波の遡上端の岸沖位置の確率分布を求める評価手法を提案した。この手法は、定期点検によって喫緊の対策の必要性の有無の判断でき、海浜の維持管理に有用なツールとしての活用が期待される。
有明海を対象として含泥率変化の計算例
現在及び将来において波の遡上が岸沖座標を越える確率 定期点検後2ヶ月間に波の遡上が岸沖座標を越える確率

 

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