2B 海上流出油・漂流物対策に関する研究

研究の目的・背景

  • 国内大規模な油流出事故は、様々な対策が取られているにもかかわらず、未だ世界中で発生している。一旦事故が起これば、環境への影響や経済的損失は甚大である。我が国近海でも、1997年のナホトカ号の事故のほか、2007年には韓国の泰安沖で油流出事故が発生している。
  • 2010年のメキシコ湾の海底油田からの流出事故は、被害額が2兆円にも及ぶといわれている。2011年には、中国の渤海海底油田でも原油の流出事故が発生している。今後、サハリンプロジェクトが進むオホーツク海や東シナ海の油田開発に伴う油流出リスクも懸念される。さらには、2015年1月には、韓国釜山沖の船舶事故に伴う流出油が一週間以上かけて島根県沿岸に到達するという事象も発生している。
  • 海洋へのごみや油の流出が日常的に発生しており、船舶航行の妨げになるとともに環境へ影響を及ぼしている。
  • 国は、大規模な油流出事故への対応として、5,000トンクラスの大型の浚渫兼油回収船を、また、内湾の浮遊ごみや浮遊油への対応としては、200トンクラスの海洋環境整備船を配備している。
  • そこで、本研究テーマでは、国が自ら所有している船舶でのごみや油の回収業務について、機能の高度化や運用の効率化を図っていくための、技術的な支援を行っていくとともに、技術開発により被害の軽減手法の構築をめざす。さらに、東日本大震災を踏まえ、事故に加え、地震や津波による油流出も検討対象とする。

研究の概要

  • 油流出による海洋汚染を軽減するためには、流出油の回収技術を始めとする対応技術の高度化、並びに事前にリスクを把握し備えるための技術が重要である。対応技術に関しては、これまでも油回収機を中心として様々な装置の開発に取り組んできているが、今後ともさらなる高度化や課題の解決に取り組む。事前のリスク評価をはじめとする油濁対応支援の技術に関しても、油漂流予測ツールの開発を中心として、漂流油の検出捕捉技術を含めて研究開発に取り組む。
  • 漂流ゴミとともに、海底の沈木やごみは漁船の底引き網に絡まるなどのトラブルや環境への悪影響を及ぼしている。このため、国の所有する環境整備船で海底の沈木やごみを速やかに回収する装置の開発に取り組んだ。

2015年度の活動

  • 昨年度のドライアイスブラストによる油剥離実験の成果を踏まえ、本年度は、剥離特性に加えて、剥離した油の吸着及び水面での浮遊という三要素を同時に持ち合わせるブラスト材の検討を行った。具体的にはポリスチレン発泡ビーズによる油剥離ブラスト実験を実施し、油剥離に適した条件等を明らかにした。また、船体除染模擬実験を実施し、実用化に向けた課題などを検討した。
  • 港湾の重要施設における海上流出油の漂着抑制に資する技術として空気を水中から放出するエアバブルカーテンによる油の排除技術検討した.実験を通じて、昨年度提案したバブルカーテンによる油の排除幅モデルを提案した。さらに、バブルカーテンによって生じる水面近くの水平方向流速分布に関して検討を行い、流速を表すモデルとしてKobusのモデルが妥当であることがわかった。
発泡ビーズによる油の剥離実験 バブルカーテンによる油の排除
(画像処理による解析
バブルカーテンによって発生する水平流速モデルの比較
  • 海上流出油の移流及び拡散のシミュレーションモデルOIL-PARIと高潮・津波数値シミュレータSTOCによる津波の計算を組み合わせて、津波災害時の油の移流及び拡散計算を行った。数値計算は水平方向の油の移流及び拡散の他、油が土砂に付着して沈降する現象も再現できるようにするため、新たにOIL-PARIを3次元に拡張し、粒子沈降モデルを導入した。開発したモデルを2011年の東北地方太平洋沖地震津波による宮城県気仙沼港の油流出に適用して再現計算を実施し、津波によって流出した油の移流及び拡散の妥当性について検証した。
津波災害時(気仙沼港周辺)の油の移流及び拡散の計算結果

 

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